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第七話 絵を描く
異世界でひとりぽっちになった。
私はあまり無茶はしない性格なのでエルの帰宅を大人しく待った。知らない土地、というか、知らない世界を来たばかりで冒険するのは勇気とは言わないだろう。それこそ、モンスターがいるかもしれないし、異世界でおなじみ(?)のドラゴンが飛んでたって何の不思議もないわけだから。ここにひとりで待っているのだって本心を言えば不安だ。
「続きを書くか……」
私は不安を紛らわすためにルール表の作成に没頭した。が、やがて紙の余白が足りなくなった。
「あー、もう書けるところが無い。……この余白に…… いや、変か。どうしよう。……エルが帰るまで待つしかないか」
すると
「ただいマッ!」
「あ、エル。おかえり、ちょうどいいところで帰って来た。あのね、メモ用紙になる白い紙が1枚欲しいんだけど」
「メモ用紙ならいつもカバンに持ってますよ。1冊あげますネ」
メモ用紙を持ち歩く人は大抵が創作者である。どうやらエルは星の担当者としていつもマージをより良くしていけないかと創意工夫をしているようだった。
「ありがとう。あと、色ペンもありませんか。これは無ければ無いで大丈夫だけど」
出来れば重要な所や間違えそうな所は赤でアンダーラインを引きたかった。
「ありますよ。何色ですカ?」
「じゃあ、赤を」
「赤…… これでいいですか。ピンク色の蛍光マーカー」<
115.ここまでのあらすじ 飯田ユキと井川ミサトは交通事故寸前で助けられ異世界へと転移する。しかし2人は別々の場所に飛ばされてしまった。 ユキは『スノウ』と名を変えて、自分は神様だと言う女『エル』と共にこの世界に麻雀を普及させる活動を行うことに。 一方ミサトは神様の相棒であるリス仙人『キュキュ』と共にユキを探す旅に出る。 【登場人物紹介】飯田雪(スノウ)いいだゆき主人公。井川ミサトと旅をしている最中に気付けば異世界へと飛ばされていた。本作品内ではスノウと名乗る。井川美沙都いがわみさと飯田雪の親友で麻雀の師匠。異世界に飛ばされてしまった。頼れるリスを相棒にしてユキを探す旅に出る。エル異世界の神様。世界をもっと良くするために麻雀の伝道師となる人物を地球から連れてきた。キュキュ異世界の仙人。知識豊富で使える魔法も多い少年。だが魔力を使い過ぎるとたちまち少年からリスになってしまうという欠点がある。ミサトの肩に乗りながら旅に同行する。その4第一話 伝説の巫女『ヨシエ』 ――約8年前。地球にて「はい、これ。ヨシエが欲しがってたスノウドロップの球根。私が負けたらあげる約束だからね、好きなだけ持っていっていいよ」「いいの? じゃあ持てるだけ持っていこう♪」
114.第六話 麻雀牌生成 ミサトの書いたエッセイ記事は読みやすい大きめな文字で1話2000字ほどにまとめ、それに麻雀牌の挿し絵を描いて創刊号は特別価格とし無料同然で配布することに決めた。まずは読んでもらえないと話にならないから。 そして、最後に ――この物語が面白いと思った方はこれを次の人に回してください。なお、こちらのファンクラブ登録をしてくださると次回作の完成通知を送らせていただきます―― と添えた。元々これをきっかけにして麻雀を広めるのが目的であって本の売り上げで儲けようという意図はないので人に回し読みされた方が都合がいいのだ。 とは言え、2話目からはもう少しお金を取るようにするが。「ミサト、頑張るねえ。仕事し過ぎじゃない?」「私は元からこうだから。出来ることはやる。怠けない。それが私の生き方なの」「って言ったってその疲れた身体で生成魔法使ってたら本当に気絶しちゃうからね」 実はミサトは生成魔法で少しずつ麻雀牌を作っていた。1日に2枚ほどのペースで、主に食後にすぐやっていたが最近では慣れてきたのもあり毎日4枚生成していた。「大丈夫大丈夫。鍛えてるから。私の体力は女流プロでもナンバーワンって言われてたのよ?」 そう言っていたが次の瞬間「あ…… あれ?」 ミサトはクラリと立ちくらみをした。「わわっ!」 よろけるミサトをサッと支えるキュキュ。「もう、いま僕がリス姿だったら大変だったよ。無茶しないで、今日の生成はやめなよ」「……そうね、筋トレして寝ることにするわ」「いや、すぐ寝
113.第伍話 ミサト、魔法を受け取る ミサトは書いていた。1日に2度ほど食事に出て、その帰りにキーボードのあるステージで演奏しておひねりをもらい。あとは宿でひたすら書いた。「ねえキュキュ、キーボードはどの街にもあるの?」「流行ったからねえ、多分どこでもある。よほど田舎ならわからないけど『街』と言えるくらいの都市ならあると思うよ」「ふうん、助かるわ。おかげで暮らしていける。にしても暑いわね。太陽らしき星はあんなに小さいのに……」「あとで服を買いに行こう。マージの気候に合った薄着を買った方がいいよ」「そうね」 マージの気温は日本より暑く、外で演奏する度にミサトは汗をかいていた。「ねえ、キュキュ。せっかくの異世界なんだから私も魔法とか使えるようになったりしないの?」 ミサトはこの世界で自分だけ魔法が使えないことに気付いたようだった。大なり小なりみんな魔法は使っている。子供でも魔力はあるようだった。「え? 必要ないじゃん。それとも何か魔法でやりたいことでもあるの?」「ちょっとね、欲しいものがあって」「それなら買えばいい」「売ってないのよ、この世界には」「なるほど、生成の魔法を使いたいんだ? それなら僕の手持ちの魔法だからあげてもいいけど、でもあれは大魔法の部類に入るから使うとかなり疲れるよ」「あげてもいいって…… 魔法って譲渡できるの?」「うん、この半透明のシールを貼れば大丈夫。そっか、ミサトは知ってるわけないよね。魔法はね伝授することもできるけど、基本はシールで売ってるんだ」
112.第四話 一石二鳥の構え「ねえ、ここはこんなに広いのに娯楽は音楽とダンスしかないの? 他にも少しくらいはあるでしょう、ここまで文化的な世界ならさ。マジメな人しかいないにしてもマジメならマジメなりの、そういう娯楽もあると思うのよ」 食事を済ませて元気になったミサトは少年姿のキュキュと街の中を探索していた。「例えば、何?」「んー……読書とか?」「あっ、なるほど! それはいい考えだね、たしかに読書は時に興味深いよね。ああそうか、読書って娯楽になり得るのか。この世界には教科書みたいな本が多いんだけど、勉強になるばかりが本じゃない。これはもしかしてビジネスチャンスかもしれない」「えっ、キュキュが本でも書くの?(リスなのに)」「まさか! ミサトが書くんだよ。翻訳はやってあげるからさ」「は? えええええーーー?!」──── 紙とペンを購入。「さっ、どうぞ先生」「いや、そんな事いきなり言われてもね……なにを書いたらいいのやら。さっぱりわからないわよ」「バカだなミサト、意外と頭カタイんだね。考えてもみなよ、ミサトは僕からすれば異世界人なんだから、元いた世界の想い出でも書けばいいんだよ。それってつまり異世界冒険小説なわけだから」「そ、そうか。エッセイでも書けばいいのね。……分かった」(そう言えば、地球にいる時ユキもよくパソコンで書いてたっけな。いや、ユキだけじゃない……) ミサトは麻雀部のみんなで研究資料を作っていた頃を思い出しながら自分自
111.第三話 巨大都市到着 肩の上に喋るリスを連れてミサトは旅に出ていた。「そう言えばミサトは本当なら大きいんだよね。チキュウ人だもんね」「そうよぉ。スタイル抜群の美人雀士で有名だったんだから。なんでそれがこんな可愛い人形みたいなことになってるんだか……」 クリポン族は他の種族たちに『動くぬいぐるみ』と言われるほど可愛らしい。ただ、ミサトはストイックに身体を作るアスリート気質だったのでこんな身体はどうしても納得できないでいた。「次行く所は『シン』と呼ばれる種族を先祖にしたグループの都市でチキュウで言うところの『エルフ』っていう種族に近い姿をした人たちの街だから姿戻そうか? その方が歩くのも楽だろうし。ただ、耳は髪で隠しておいた方が面倒じゃなくていいかな。チキュウ人の耳は尖ってないもんね」「えっ! 戻せるならそうしてよ! 歩幅が小さくて疲れてきてたのよ。なんだ、戻せるんだ?」「戻せるよ。なんとなくそのままにしてただけで。 クリポン化させるのは魔力使うけど戻すのはそれ程でもないし。はいっ」「ままままって服! 服はどうなるの……(質問に答えるより先にミサトに魔法解除をかけるキュキュ)キラキラキラ……あ、人間の時着てた服を継続するんだ……」(そう言えばキュキュもリスの時は何も着てないけど少年になると服着てたな)「あ、大きいなあ」「ちょっとー。エッチ! どこ見て言ってるのよ」&n
110.第二話 簡易雀荘完成 4枚麻雀はサイコロ麻雀をマスターしていれば簡単に覚えられるものだった。「なるほど、これを覚えさせるためのサイコロ麻雀だったんダ」「そうよエル。ただ今回は数字が9まであるから6は端っこじゃないことだけ注意してね」「これは何? 予備かシラ……」 エルは不思議そうに白を見つめる。「それは白(ハク)と言うもので真っ白なデザインなの」「えっー! これがデザイン?? 不思議~。なにも無いのがデザインだなんテ」「言われてみればそうよね。考えたことも無かったけど……」「でも、なんか好きかも。ツルッとしテテ、カワイイ」「そう言えばエルは白系の同じような色の服ばかり着てるわよね。白が好きなの?」「白色は200種類アンネン」「なにそれ」「チキュウに行った時テレビでやってたのを見たの。アミンカって人が言ってタ」「200はないでしょ」※実際には白も黒も300色以上あるという。ほんとのはなし。「で、このルールだけど。基本的にはサイコロ麻雀と同じ2枚同じものを揃えるのと3枚1組のメンツを1組作る。それだけよ。ただ今回から字牌(じはい)が入る」「字牌?」「この白とかのことね。(白は字書いてないけどね)白、発、中の3種だけは順子使い出来ないから。順子はもう覚えたよね?」 身振り手振りでスノウが教えたあとにエルがマージ語で説明を繰り返した。(面倒だから翻訳機とかあればいいのにな)と思うスノウ。「字牌は縦にしか使えないという性質を持っています。なので、比較的使いにくくてそこがまたゲームの面白さを増す要素となってます。今日はとりあえず実際にやってみましょう」&n